2016年度 活動報告

期 間:2016年4月1日~2017年3月31日

 研究室設立後5年ほど経過したが、1~3ヶ月おきの勉強会に加えて、室長熊丸が参加している医学会の報告も書面に残し、HPにもアップする方針とした。最先端の西洋医学知識も、会員に提供したいという意図からの発案である。

  今年度は、所謂医学分野の学術集会である為、医学用語を使わざる部分もあり過去の職場への報告書の様に作成してしまったが、医療従事者でない会員も少なくないため、余り専門的な用語を頻用せずに、解りやすい言葉で、出来れば簡潔に作成するようにと、会員からも要望があり、次年度の改善点とする方針である。

1. 臨床医療活動として、主勤務先のAOI国際病院での、健康診断を主とする業務

 開院後3年経過して、健康管理センターの運営も安定し、年間の受診者も35,000人を超し、病院とは違って経営的にも黒字となっている。そこから次の組織の目標として昨年度も多方面に打診しながら、中国などからのメディカルツーリズムを実施するべく2016年度はJTBの当該部門と交渉し、定期的に受診希望者を紹介して貰う様努めた。

  JTBでは既に徳州会系の千葉西総合病院や、湘南鎌倉病院で実施しているとの情報があるが、夏に5名の中国本土からの受診者を受けた。その後別のルートで上海にクリニックを経営する日本人医師からの10名の受診者を9月に受け、その後BIT国際という組織を通じて、特に2017年に入ってからは、徐々に少人数ずつながら、継続的に受診者が来院している。

  羽田空港から川を渡る橋を架けて直接当院の方に移動出来る道路が2年以内に完成することになっており、アクセスの利便性からも、今後ベトナム、カンボジア、ミャンマーなどのアジアの国々からの受診者も受け入れるべく、それぞれの国の言語での問診票の作成など、準備を開始している。

  第2,4水曜日のケイアイ秋葉原クリニックの循環器外来、第2,4土曜日のパレスビルクリニックの人間ドック外来も継続しており、循環器疾患患者のフォローも都市部のExecutive向けの健康アドバイスも、続けることが出来ている。(川崎市幸区の田村外科での外来は、先方の経営上の理由により昨年度で中断となった)

2. 心臓血管外科としての手術の手伝い

 

 川崎市立川崎病院の症例数減少の影響もあり、済生会東部病院の手術が主体となってきたが、Stent治療では、同病院で手術に立ち会い経験を積んでいる。近年の傾向として、大動脈瘤はかなりの確率でステント治療が採用されてきており、開胸術後の追加乃至再手術としての選択も増えている。超高齢者でのTAVI治療も増加傾向にある。

  • ステントグラフト挿入:川崎市立川崎病院、AOI国際病院(TEVAR 9例/EVAR 2例)
  • 開胸弁置換術:済生会横浜市東部病院(大動脈弁5例、僧帽弁1例:形成術1例)
  • TAVI(経皮的大動脈弁置換術):済生会横浜市東部病院(7例)
  • 大動脈置換術:済生会横浜市東部病院(上行置換2例、全弓部置換1例)

3. 学術集会、研修会の参加

最新医学情報収集目的で、学術集会・研修会参加も継続。

4月16,17日 第116回日本外科学会定期学術集会(大阪国際会議場)
6月4日 第240回日本循環器学会関東甲信越地方会(ステーションコンファレンス東京)
6月11日 第171回日本胸部外科学会関東甲信越地方会(都市センターホテル)
7月14,15日 第63回日本不整脈心電学会学術集会(札幌コンベンションセンター)
7月23日 第11回信濃町CVS研究会(日本橋アステラス製薬本社)
7月29日 日本人間ドック学会学術大会(まつもと市民芸術館・ホテルブエナヴィスタ)
8月5,6日 殿町ウェルビーングイノベーションスクール サマープログラム(川崎市殿町)
9月25日 第64回日本心臓病学会総会(東京国際フォーラム)
12月3日 第242回日本循環器学会関東甲信越地方会(ステーションコンファレンス東京)
翌2月2日 第243回日本循環器学会関東甲信越地方会(ステーションコンファレンス東京)
2月28日 第47回日本心臓血管外科学会学術総会(ホテルニッコー東京)
3月11日 第173回日本胸部外科学会関東甲信越地方会(ステーションコンファレンス東京)
3月18,19日 第81回日本循環器学会学術総会(石川県立音楽堂他:金沢市)

4. 勉強会の開催

4月30日 小笠原理論のその後:講師 荒田和明(ロイワ理論研究員)
6月19日 日本人のルーツについて:講師 椎橋孝 (インテリアデザイナー)
7月9日 惠榮学について:講師 青山順吉 (投資家)
9月24日 寺社仏閣の参拝の仕方と霊能訓練について:講師 椎橋孝(インテリアデザイナー)
10月22日 東洋医学講座II:講師 高橋秀実(日本医科大学細菌免疫学教授)
2月25日 伊勢白山道について:講師 田所康人(US Beeline主催)

5. 産業医活動

主勤務先のAOI国際病院の契約先4ヶ所は昨年のまま継続、更に近隣に移転してきた旭屋ミ-トセンターの訪問も追加された。

  • 関東エース(株) 川崎営業所、鶴見営業所 (各毎月)
  • 日本環境衛生センター(毎月)
  • 東京油槽(株)(3ヶ月毎)
  • 旭屋ミートセンター(3ヶ月毎)

個人契約の下記医科向け広告代理店に加えて、丸紅フットウェアの産業医訪問も開始

  • ファーマインターナショナル(毎月)
  • 株式会社丸紅フットウェア(毎月)

 昨年度から始まった、メンタルストレスチェックの職員テストも、全ての契約先で行われ、集計結果について相談に応じた。高ストレス職員の割合はいずれも10~15%と全国平均レベルかそれ以上であり、多いと思われる職場からの面談の希望者は希であった。(実際面談したのは、PI社の3名のみ)

6. 医療顧問としての活動

 PI社では例年通り、医学知識に基づくアドバイスを訪問毎に求められ、可能な限りで提供。その中で、近年のC型肝炎治療新薬(完治率が高いとされるハーボニー他)の問い合わせにも応じた、専門医の紹介も斡旋しているが、自らも勉強することで、非常に為になっている。

7. 個人的な医療相談

 友人知人からの、様々な医療相談にも、基本的に無料で応じている。
高齢者の介護関連問題、その年齢層での難病の治療、メンタルストレスによる求職の状況からどうすべきか、直腸癌の外科手術で人工肛門を避けるには、どの病院で治療を受けるべきか、癌の末期患者で、細胞免疫療法を試してみるべきか、アルコール性肝障害から起こった肝硬変末期の弁護士の肝移植をどうすべきか、など内容は様々だが、相談者の納得がいく様に善処出来ていると思われる。

8. 追加活動

喫煙のリスク・リダクション

 2016年春より、以前ケイアイ秋葉原クリニックにて実施していた禁煙外来に関する新たな活動として始まったものとして、禁煙が難しい人のためのリスク・リダクションの推進がある。これは前年度東大薬理学木村教授の紹介で訪問してきたフィリップモリス日本(PMIの日本支社)社のiQOS(アイコス)と言う電子タバコの新製品である。かつての電子タバコは、煙が出るものや水溶性のニコチンを一定量供給する形式などであったが、有害性、機器の安全性、使用者の満足度など様々な点から芳しくなかった。

  利用する製品は紙巻きタバコでありながら、PMI社のアイコスはそれを燃焼させるのでは無く、ある程度以下の温度で加熱することで、有害物質の発生を抑えながら、ニコチンは抽出してそのVapor(蒸気)を吸わせることで、利用者の満足度も維持しながら、副流煙をなくすことにより,受動喫煙の害をなくし、喫煙者自体の吸入する有毒物質も90〜95%減らせるというものである。機器の発売は2015年の秋に、海外ではスイスとイタリア、それに日本でのみ試験的に始められ、徐々に普及してきて居るとの時点で相談を受けた。

  示された有害物質の低減データ、副流煙の消失から、どうしても禁煙が無理という喫煙者や、一度は禁煙に成功したが、ちょっとしたきっかけで又吸い始めてしまったと言う場合は、この器具を使って見る価値はあると考えた。無論、有毒物質が5〜10%以下に下がったとはいえ、それで喫煙による様々な疾病を含む健康被害が実際にどれくらい減るのかは、長期的な成績が得られなければ断定的な結論は出せない。

  しかし有害物質を可能な限りへ減らすことで、その悪影響は減少する可能性も否定は出来ない。更に副流煙がなくなるのであれば、基本的に受動喫煙の害はなくなり、少なくとも周囲の非喫煙者への悪影響はなくなるはずだから、使ってみない手はないであろう。

  喫煙の害を重視している禁煙学会や循環器学会は、恐らくその長期成績のない点から、エビデンスがないと判断し、現時点ではこの器具を推奨する立場を取っていない。PMI社としても、そうしたリスク・リダクションの効果を見るべく、幾つかの臨床試験を企画して、実施し始めている。

  私自身も主勤務先のAOI国際病院を初めとして、医療に従事しながら喫煙している職員に広く勧めて、普通の喫煙を辞めて貰う事に努めながら、冷静な立場で、経緯を見守っていく所存である。

以上