2018年度 活動報告

期 間:2018年4月1日〜2019年3月31日

 今年度は、通常の日本国内の医学会以外に、過去2年ほど関わってきたタバコハームリダクション(THR)関連の学会に招待講演を依頼され、ポーランド、英国、フイリピンに渡航した。これらの会合に参加することによって、海外での喫煙の健康障害に対する取り組みが、様々な形で情報として入ってきて、非常に参考になった。

 特に興味深かったのは、英国がこのタバコハームリダクションに関しては、政府や英国王室内科学会が、禁煙ができないのであれば、有害物質がかなり軽減されている電子タバコ、或いは加熱式たばこを使用するように推奨していることだった。EU諸国ではスウェーデンが、特にその国のSnusと言う口に含むタバコ製品の100年にわたる使用経験から、喫煙と違ってEUの中で発癌率や循環器疾患が一番少ないという英国が参考にした疫学データが示すように、英国とともにTHRの先進国と言えるだろう。
世界情勢としては、米国はFDAが加熱式たばこと新規の電子タバコの導入を見合わせており、まだ発展途上というべきかもしれない。イギリス連邦であるニュージーランドは英国に準じているが、オーストラリア、シンガポール、タイ、ブラジル諸国が紙巻きタバコ以外を一切禁じているのも、ある意味科学的根拠に乏しく、不思議である。

 また、まだまだ日本国内ではこの概念に対する医師や規制当局の理解が薄い為、ポーランドで親しくなったスウェーデン人のThomas Hammargrenによって、スウェーデン大使館にて、日本人を対象としたタバコハームリダクションのセミナーを11月27日に開催することができた。
日本の医師たちに理解を得るには、様々な疫学データの解釈や今後の研究が重要と思われて、慶應医学部の公衆衛生学ご出身で2年先輩の山口直人医師の協力が得られたものの、慶應高校同期の津金昌一郎や、慶應大学医学医部公衆衛生学教授の武林医師も会に出席してくれるよう依頼したが、タバコ会社は後援もしておらずシャットアウトされていたにもかかわらず、それぞれの立場上参加しにくいようで、不参加となった。誠に残念である。

 会合では同じく慶應医学部後輩の公衆衛生学出身望月医師、大阪循環器センターの〇〇医師が参加し、2人ともハームリダクションという概念自体が、タバコ企業が利益を続けるための言い訳であるという立場で、かなり批判的であった。

 私自身のスタンとしては、禁煙が出来ればそれに越したことはないが、実際禁煙外来を実施してみて、如何に禁煙してもらうことが難しいかを実感したので、無理であればより有害性の低いと思われるものを利用することは、取り敢えずは代替案としてやむおえないのではと考える次第である。
循環器学会、禁煙学会、呼吸器病学会の方々にも今少しの柔軟性を期待したいところである。

臨床医療活動:AOI国際病院の健康管理センター、病院上部消化管内視鏡

 健康診断業務は、開院後6年目に入り、受信者は更に増加し≧55,000/年となっている。
健診センター受診者の増加とともに、契約事業所の増加に伴って巡回健診者数も着実に増加し続けていることによる。

 国際病院の自費診療病床の企画は、医師会の反対を受けたりして難航はしているが、健康診断に関する限り、中国を中心としたインバウンドの受診も継続しており、その数は徐々に増加している。国際病院の上部消化管内視鏡も2018年7月までと、2019年1月から3月まではは火曜日と木曜日の2枠を、2018年8月から12月までの間は1枠で、内視鏡医不足から私自身が施行してきた。しかし健診の診察が立て込んできた為、自分で外部からの内視鏡医(北里大学医学部消化器内科医)を探して、2019年4月以降は、健診センター業務に専念する予定だ。

 また、以前の秋葉原ケイアイクリニックの循環器外来は、四ッ谷本院に移行したのちも継続に難渋したため、2018年6、7月からは、汐留シティセンターのセントラルクリニックで、毎週水曜日午前中の外来診察(健康診断が6、7割、一般内科2割、循環器外来が1割)という形で、移行した。

 第2、4土曜日の大手町パレスビルクリニックの人間ドック診療も継続中で、以前は午前外来のみであったが、こちらも受診者が増えていて経営陣より打診があった為、9月以降は午前と午後の診察も引き受けて実施している。

心臓血管外科医師としての手術手伝い

 今年度は、心臓外科臨床経験としては、済生会横浜市東部病院でのTAVI(経皮的大動脈弁置換術)の手伝いのみとなった。
2018年5月から、2019年3月末までで、22例の症例に立ち会った。全例75歳以上の高齢者で、ハイリスクの為開心術が望ましくないケースであった。

 ほとんどの症例で合併症なく経過したが、1例のみ治療直後に完全房室ブロックを契機に心停止をきたし、心マッサージ下に頸静脈からペーシングリードを挿入しペーシングで回復、ことなきを得た症例があった。

学術集会参加:各学会参加報告参照のこと

4/5-7 第118回日本外科学会学術総会 
東京国際フォーラム/東京大学名誉教授 國土典宏
5/25-27 第18回日本抗加齢医学会総会
大阪国際会議場/近畿大学奈良病院皮膚科山田秀和
6/14-16 5th Global Forum on Nicotine 2018 Warsaw, Poland Invited lecture on THR in Japan
8/31-9/1 第59回日本人間ドック学会学術大会
新潟朱鷺メッセ/新潟大学教授 加藤公則
8/31 17:30-18:30 第1回国際人間ドック学会・組織委員会:
朱鷺メッセにて 篠原幸人
9/11-12 Global Tobacco/Nicotine Forum 2018 London, UK Invited Lecture on THR in Japan
9/22

第249回日本循環器学会関東甲信越地方会
ステーションコンファレンス東京/東邦大学医療センター 大橋病院 循環器内科 中村正人 会長

10/5-6 第71回日本胸部外科学会定期学術総会
グランドプリンス新高輪/東京医科歯科大学  心臓血管外科 荒井裕国 会長
11/14-16 2nd Asia Harm Reduction Forum Manila, Philippine Invited Lecture on THR
11/27 1st Japan Tobacco Harm Reduction Seminar at Swedish Embassy, Tokyo
11/29 第2回国際人間ドック学会・組織委員会
日本人間ドック学会本部にて 篠原幸人
12/8 第250回日本循環器学会関東甲信越地方会
ステーションコンファレンス東京/日本医科大学大学院循環器内科 清水渉 会長
2/11 第49回日本心臓外科学会学術総会
岡山コンベンションセンター/川崎医科大学心臓血管外科 種本和雄 会長
3/2 第129回日本胸部外科学会関東甲信越地方会
京王プラザホテル/聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科 宮入剛 会長
3/29-31 第83回日本循環器学会学術集会 パシフィコ横浜/東京大学大学院循環器内科小室一成

Learn More:会員限定

研修・講習会参加

8/31 第2回人間ドック健診専門医研修会 新潟朱鷺メッセ(9:30-12:30)
12/13 産業医研修会 「建設業における産後涌井の役割」神奈川産業保険支援センター
12/20 産業医研修会 「有害物質の取り扱いについて」神奈川産業保険支援センター
翌年1/11 産業医研修会 「職場の感染症対策」神奈川産業保険支援センター
1/25 産業医研修会 「アスベストによる健康障害の最新の知見」神奈川産業保険支援センター
3/31 小型船舶操縦士1級免許更新講習 日本海事センター

勉強会主催:会場は第35回の医療福祉大学赤坂キャンパス以外、東京アメリカンクラブ

5/19 第32回抗加齢・統合医学研究室勉強会 「ドイツにおける自然医学」岩田明子
6/23 第33回抗加齢・統合医学研究室勉強会 「聴覚と呼吸の本質から」堀 雅彦
8/15 第34回抗加齢・統合医学研究室勉強会 「超過勤務・メンタルヘルス・睡眠」中田光紀
11/10 第35回抗加齢・統合医学研究室勉強会「日本人は何故英語が下手か?」中田憲三
12/8 第36回抗加齢・統合医学研究室勉強会「アーユルヴェーダの世界観:知性の過ち」青山圭秀
(各勉強会の報告書あり、参照のこと)

産業医活動

医療法人社団 葵会AOI国際病院(職員全体)と附属老健施設「葵の園川崎南部」の産業医
前者は毎月第3火曜日午後安全衛生委員会、後者は毎月第2木曜日午後安全衛生委員会

その他;

  • 健診センター契約先:2019年1月で常勤の瀬田医師が退職した為産業先が急増
  • 日本環境衛生センター:毎月訪問
  • 東京油槽(株):3ヶ月おき訪問
  • 旭屋ミートセンター:3ヶ月おき訪問
  • ペプチドリーム:3ヶ月おき訪問
  • 三協興産:3ヶ月おき訪問
  • 日本物流センター:3ヶ月おき訪問
  • 丸全昭和運輸(株):時間外超過職員の面談多数
  • 山九十機工(株):時間外超過職員の面談多数

個人契約の産業医先:

  • ファーマインターナショナル:毎月第2水曜日午後訪問
  • (株)丸紅フットウエア:毎月第2水曜日午後訪問

 昨年度から始まった、メンタルストレスチェックの職員テストも、全ての契約先で行われ、集計結果について相談に応じた。高ストレス職員の割合はいずれも9~12%と全国平均レベルかそれ以上の部署も事業所によってはあり、多いと思われる職場からの面談の希望者は極希であった。(実際面談したのは、PI社の2名のみ)

医療顧問として

 産業医先でもあるファーマインターナショナルは医科向け広告代理店であり、様々な医療分野で医学的な質問、専門医の意見聴取を求められ、可能な限り対応。KOLの面談希望の場合は紹介もしている。

個別医療相談

 友人、知人からの医療・健康相談にも従来通り可能な限り応じており、専門医受診希望では、紹介も行っている。

その他

 今年度、自分自身の白内障に依る、眼内レンズ交換の手術を、東京歯科大学水道橋病院眼科にて受けた(右眼4月18日、左眼7月9日)が、多焦点レンズである為、遠方はかなり鮮明に見えるし、左眼をやや近位に合わせて貰ったことで、基本的に眼鏡を必要とせず、12歳時からの50年間のコンタクトレンズ着用からついに解放され、非常に感動した。感無量ともいえるほどであった。