2020年度 活動報告
期間:2020年4月1日〜2021年3月31日
今年度は昨年の終わりに中国で勃発したコロナウィルス感染症(COVID-19)のお陰で、日本の社会を含めて世界中が、様々な分野で大きな打撃を受けた。
昨年度報告書の後半に、中国の武漢市に始まる事の起こりからある程度の経緯を解説したが、その後も国内での感染者は次第に増加し、ゴールデンウィークを挟んで4月の後半から5月上旬にかけて、第1波と呼ばれるこの感染症の流行が見られた。
これは、春の日本の大きなイベントである3月下旬の花見の会合で、多くの人が宴会を実施した結果であるとの意見であった。恐らくはそれを予測して、小池百合子東京都知事も、今年のゴールデンウィーク連休は「ステイホームウィーク」にしてくださいと呼びかけ、不要不急の外出を控えることも含めて、都道府県境界を超える移動・旅行やレジャー活動を控えるという感染拡大を防ぐべく対策を立て、都民、そして政府も国民に呼びかけた。(この時期に、芸能人2名が感染して重症化し、2人とも回復することなく死亡し、マスコミでも大きく取り上げられた。)
東京都は政府とともに連携して緊急事態宣言(4月7日~5月14日)を発令した。これは行政的には、3月13日制定の新型コロナウィルス対策の特別措置法に基づくもので、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に実施され、4月16日に全国に拡大された。更に、北海道、茨城、石川、岐阜、愛知、京都の6つを加えた13都道府県を、特定警戒都道府県として、重点的に感染拡大防止の取り組みを進める必要があるとした。
5月14日には、北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、京都、兵庫の8都道府県をを除く、39県で緊急事態宣言を解除した。続いて5月21日に大阪、京都、兵庫の宣言解除、更に、5月25日に残る首都圏1都3県と北海道の宣言解除が実施された。
その後小池都知事は、東京アラート(6月上旬の2週間)としてその状況を都民に知らしめ、ことの重大さを認識するように、都知事はレインボーブリッジの夜間照明を、アラート期間中赤に変更した。
こうした行政からの国民への呼びかけの甲斐あってか、5月の後半以降は新規感染患者が減るという望ましい現象が見られたのである。
しかしながら、ステイホームウィークの呼びかけに人々が呼応して、感染症例は一旦減ったものの、その後の人々の気の緩みからか、7月から8月にかけて感染例の増加を再度認めた。これは第2波と判断され、東京都内の1日の新規陽性患者数も、第1波のピークが200例前後であったのに対し、第2波では300例に近づいており、感染経路が不明の新規発生症例も増えてきて、夜間の外食だけでなく、家庭内感染の懸念も生じ始め、緊急事態宣言の再度発令も検討されたが、初回の緊急事態宣言の際の、飲食業、娯楽施設その他の規制で経済的なダメージが大きく、それに対する行政からの補助金の問題もあったためと思われるが、基本的には個人個人の3密に繋がる行動の自粛、企業などはテレワークの推奨、或いは維持・強化を促す程度に終わった。
その一環として、7月22日に開始されたGo toトラベルキャンペーンとして、それまでに大きな打撃を受けた観光業界を支援する政策も検討され実施され始めたのもこの時期である。
この時期の全国での1日の新規感染患者は、第1波のピーク571例よりは増えて1570例前後には増えたが、その後ピークアウトしたことも、それなりの効果があったという判断をされた模様である。
しかし、その後9、10月と大きく症例数の減少は認められず、いわゆる新規患者数の下げ止まりが続き、様々な議論は出たものの、これと言った対策は実施されず、11月に入ってから次第にまた患者数が増加していき、Go toトラベルキャンペーンの維持の可否が問題視されるようになった。
その後の全国の1日の新規患者数は、≧2000,≧3000と増加したため、Go toトラベルキャンペーンは12月28日に停止され、取り敢えず翌年1月11日迄とされたものの、1月9日のピーク7790例を持って延期され、結局3月7日迄の延長となった。このオーバーシュートとも言うべき感染拡大は、当然第3波として捉えられ、2021年1月8日、ついに政府も第2回目の緊急事態宣言を発令するに至った。これは当初1ヶ月間と言うことで2月8日までの予定だったが、事前に設定していた数値や感染拡大ステージからの脱却が思いのほか遅れたことなどから、更に2月21日迄延期され、更に3月7日に延長、そして最終的には首都圏1都3県では3月21日迄の延長となってしまった。
一方、大阪、京都、兵庫の府県では経済的なダメージを少しでも早く回復するために、非常事態宣言の早期解除を国に要請し、都心部よりも早く解除することとなった。
その後、大阪府での新規感染患者が増え続けて、東京を上回る結果となり、今度は蔓延防止法案を制定し発令しようとする動きに変わっていくのである。
臨床医療活動:AOI国際病院の健康管理センター、病院上部消化管内視鏡
主要勤務病院であるAOI国際病院も開院後8年目となったが、前述のコロナウィルス感染症の蔓延とそれに対する行政の呼びかけによって社会情勢が大きく変化し、不要・普及の外出、企画やイベント、様々な行事が一旦中止か延期となり、医療の分野でも緊急性の低い検査などは健康診断も含めて、見合わせる方針と大きく変化した。
それにより一般健康診断も、また、人間ドック健診さえも、多くの事業所から取り敢えず延期して欲しいとの要請があり、受診者数は激減した。
特に健康診断における内視鏡検査は一旦中止という日本内視鏡学会と外科学会からの通達もでて、自施設でも4月5月とそれまでに予約の入っていたものを覗いて、更に新規予約を中断した。
5月の末には緊急事態宣言が解除され、昨年報告したように、自施設でも上部消化管内視鏡検査の部署を4月から開設しており、6月から再開することとなった。また、人間ドック健診だけでなく、延期していた契約企業の一般健診も徐々に再開され、7月から8月にかけて受診者数が増え、9月以降は自施設受診者だけで1日100名を超えるようになり、ほぼ同時に、巡回健診先も1日に2カ所以上に派遣する程の需要となり、巡回健診だけで2~300名、時に500名を超えるようになり、施設開設以来最も多忙な時期となった。
他方で、病院の臨床業務においては、AOI国際病院として、コロナウィルス感染症患者を管理できる十分な設備と人員が確保出来ないという判断から、発熱≧37.5℃と呼吸器症状、更に、全身倦怠感などの臨床的にコロナウィルス感染を疑う症状の有る受診者は、外来で隔離対応として、当初はPCR検査を保健所で、夏以降は病院内での検査を実施して、陽性であれば,コロナウィルス感染症対応病院に紹介・転院という形をとった。秋口以降は、コロナウィルス抗原を測定することにより、早期に疑い患者をスクリーニングして、PCR検査を追加して行く形に変わっていった。
しかしそのうちに、社会的にも特に首都圏を中心に、コロナウィルス陽性患者が徐々に増え続けることによって、受け入れられる医療施設の窮状が認められ始め、自施設から受け入れ施設にすぐに転院しにくい状況が認められた。
更に、外来の段階でコロナウィルス感染患者の受け入れを遮断し続けてきても、入院或いは転院時PCR陰性で有った患者が、その後に有症状となりPCR再検にて陽性と出て、そこからクラスターが発生すると言う現象が、その後年末にかけて2度発生した。
1度目は、8月下旬、ICU病棟での発生で、患者1名からPCR検査陽性者が出て、経路確認により新入職の看護師が感染源と考えられたが、対処が早く、2週間後に、ICUの通常業務は再開できた。2度目のクラスターでは療養病床の病棟での発生で、患者は23人、職員が14人のPCR検査陽性であった。患者は可能な限り対応病院への転院を実施したが、全員がすぐには受け入れて貰えず、約1週間を要した。職員の陽性者は全員即自宅待機としたが、発症した職員はいなかった。
その他に、脳外科の医師が1名発熱などを認めPCR検査検査が陽性となり、すぐに自宅待機としたが、濃厚接触者と思われた脳外科部長と3人目の脳外科医もPCR検査陽性となり、自宅待機とした。彼らの診療した受診患者にはその後の検査で陽性者は出なかった。
その後の病院の外来受診者数も、コロナウィルス感染症問題が勃発する前に、1日300名を超えるに至っていたが、コロナ禍以降一旦減少を認めていた。しかし周辺の中規模以上の病院がコロナ患者を受け入れる態勢をとっていることで、接触感染などを恐れる患者が当院のような施設を選ぶという現象も起き、徐々に増えて,1日500人受診者を認めるようになった。
2020年度の年度末の集計では、受診者の延べ人数は≧55000人、総売上は7億円に達した。コロナウィルス感染症の打撃を考慮に入れると、大健闘したと考えられる。
中国を中心としたインバウンドの受診はコロナウィルス感染症のお陰で、結局完全にストップしてしまった。しかし、中国の感染症のある程度の落ち着きを見た2020年後半9月以降に、中国大使館からの依頼があり、日本在住の中国人や、コロナによる職業的長期滞在者の一時帰国に対して、日本出国前にPCR検査を依頼したいとの打診があり、要望に応えた。
2018年夏に開始した汐留シティセンターのセントラルクリニックでの、毎週水曜日午前中の外来診察(健診診察6~7割、一般内科診察2割、循環器診療1割)を継続している。診療人数も40-50名、結果判定が15名平均である。このクリニックの診療時間は9:30-13:30であったが、2021年1月より9:15-13:15となり、4月からは9:00-13:00となることになった。
第2、4土曜日の大手町パレスビルクリニックの人間ドック診療も継続していたが、コロナウィルス感染勃発後、2ヶ月ほど休診となり、再開後は午前のみの診察となって、待合室が混むことを避けると言う目的で、診察は胸部聴診のみ、結果説明はしないと言う形態となり、むしろリスク低減よりは、数をこなして利益を上げるという印象も強まり、2021年3月一杯で退職することとした。6月より日本橋で新規開院される、生活習慣病を主体とした内科外来と健康診断を行う予定の、サルスクリニックに勤務予定である。この施設は、今後オンライン診療やアプリを使った生活習慣病の日常のケアまでカバーしていく計画を立てていて、今後が期待される。
心臓血管外科医師としての手術手伝い
今年度も、心臓外科臨床経験としては、済生会横浜市東部病院でのTAVI(経皮的大動脈弁置換術)と川崎市立病院でのペースメーカー植込み術手伝いとなった。
2020年4月から、2021年3月末までで、22例のTAVIと3例ペースメーカー植込み術の症例に立ち会った。ペースメーカーは全例が2本の心内膜リードを要するDDD型でカットダウンによる手技、TAVIは全例75歳以上の高齢者で、ハイリスクの為開心術が望ましくないケースであった。
学術集会参加:各学会参加報告参照のこと
尚、今年度は未だかつてないコロナウィルス感染症という、誰も予期しなかった問題が広範囲に社会に影響を及ぼし、医学会の会合すらも三密を避けて感染拡大を予防する観点から、Web会議の形態を取り入れることを余儀なくされ、少人数での学会場の現地での参加も受け入れるというハイブリッド開催が始まった。
実際に発表演者と聴衆が直接顔を合わせることなく、Web上での一方向的な聴講はどうなるかと不安はあったが、内容を十分理解するという意味では、後日オンデマンド形式で再度聴講できる場合もあり、診療業務で多忙な場合も自分の都合に合わせて聴講できると言う点は、案外重宝であるという意見が多いようだ。今までは偶にとはいえ同時刻に聴講したい発表があるとどちらかを断念していたが、現状であれば別に聞き直せるのである。
勿論演者と顔を合わせて質疑応答が出来ない点は、臨場感に欠けると言う欠点は拭えないが、仕方有るまい。
7/24 | 第256回日本循環器学会関東甲信越地方会の教育講演2.3を聴講 |
7/27-8/2 | 第84回日本循環器学会学術総会 京都国立国際会館/京都大学循環器内科 木村剛 |
8/13-15 | 第120回日本外科学会定期学術集会 パシフィコ横浜/慶應義塾大学外科 北川雄光 |
8/17-19 | 第50回日本抗心臓血管外科学術総会 福島県立医科大学 心臓血管外科 横山 斉 |
8/19-21 | Global Tobacco Nicotine Forum 2020 /HongKong Web Conferenceにて発表 |
9/25-27 | 第20回日本抗加齢医学会総会 浜松コンベンションホール/順天堂大学循環器内科 南野 徹 |
10/28 |
Roundtable Study on Consumer in Japan(THR)Web会議 Delon Human |
11/26-27 | 第61回日本人間ドック学会学術集会/虎ノ門病院健康管理センター 荒瀬康司 第27回国際健診学会IHEPA2020/東海大学名誉教授・立川共済病院 篠原幸人 |
12/2 | Tobacco Harm Reduction & Novel Nicotine/Tobacco Products Web会議参加 Yvonne Lucas/Mark Douganによるお誘い |
12/3-5 | 第41回日本臨床薬理学会学術総会 福岡国際会議場/九州大学薬理学 大戸茂弘 |
2021/3/26-28 | 第85回日本循環器学会学術総会 パシフィコ横浜/奈良県立医大 斉藤能彦 |
研修・講習会参加
今年度あらゆる研修・講習会は、COVID-19問題のため、殆ど延期となった。
8/23 | 日本不整脈心電学会の教育講演1.2.3を受講 |
10/15 | 第24回日本心不全学会のICD/CRT合同研修セミナーを受講後終了時テストに合格 によって、ICD/CRT研修終了証(5年間有効)を発行 着用型自動除細動器(WCD)処方資格W14-p000897を取得した |
勉強会主催: COVID-19の影響下、今年度は以下の4回に限られた。
7/11 | 第43回抗加齢・統合医学研究室勉強会 ニュー新橋ビルA-3会議室にて 「がんの光免疫療法」について 講師:石川貴大 (株)先端バイオ医薬研究所CEO |
8/22 | 第44回抗加齢・統合医学研究室勉強会 青南いきいきプラザにて 「がんの温熱療法」について 講師:竹内 晃 ルーク・クリニック院長 |
9/11 | 蔵塾20周年記念講演会 蔵酒と旬膳 蔵 にて(AAIMC勉強会サテライト) 「米大統領選挙の行方と世界の新秩序」 〜大統領選挙とアメリカ政治を焦点にさらに国際問題と米中関係について〜 講師:中岡 望 フリージャーナリスト・東洋英和女学院大学大学院客員教授 |
2021/1/23 |
第45回抗加齢・統合医学研究室勉強会 ながさき内科医院にて 「トランプとバイデンの政権交代の裏側」講師:村上篤良 TBS社員 (各勉強会の報告書あり、参照のこと) |
産業医活動
医療法人社団 葵会AOI国際病院(職員全体)と附属老健施設「葵の園川崎南部」の産業医
前者は毎月第2火曜日の院内巡視と第3火曜日午後安全衛生委員会を実施し、後者は毎月第2木曜日午後安全衛生委員会に参加している
その他:
健診センター契約先:
- 東京油槽(株):3ヶ月おき訪問
- 旭屋ミートセンター:3ヶ月おき訪問
- ペプチドリーム:3ヶ月おき訪
- 日本物流センター:3ヶ月おき訪問
- 丸全昭和運輸(株):時間外超過職員の面談複数
- 山九十機工(株):時間外超過職員の面談1件
個人契約の産業医先:
- ファーマインターナショナル:毎月第2水曜日午後訪問
- (株)丸紅フットウエア:毎月第2水曜日午後訪問
医療顧問として
産業医先でもあるファーマインターナショナルは医科向け広告代理店であり、様々な医療分野で医学的な質問、専門医の意見聴取を求められ、可能な限り対応。KOLの面談希望の場合は紹介もしている。
個別医療相談
友人、知人からの医療・健康相談にも従来通り可能な限り応じており、専門医受診希望では、紹介も行っている。
その他
昨年に引き続いて年が明けてからも最大の問題は、冒頭に述べたようにようにCOVID-19のパンデミックな蔓延とその遷延状態である。コロナウィルス感染症が話題になり出した昨年の始めには、世界中の誰もこれほどの世界規模で、人々の健康だけでなく、社会情勢、経済、政治に大きな影響を及ぼすと予想したものはいないだろう。
すでに触れたが、国内の感染拡大は,春の花見などをきっかっけに広がり初めて、ゴールデンウィーク周辺の自粛で一旦減少したものの、その後の気の緩みから夏以降再度拡大し、年末から新年にかけて、オーバーシュートとも言える急激な増加を見たため,第3波への対策として2度目の緊急事態宣言が発令されたが、感染数の減少は、初回ほどではなく、関西の3府県が先に緊急事態を解除した結果、特に大阪での今までにない急上昇が認められており、新年度になってますます問題は大きくなりつつある。当然、直近の現象は、第4波として見なされ、このままではいずれ首都圏でも同じことが起きると人々の懸念は広がっている。
これは昨年複数回のロックダウンを余儀なくされた欧米にも言えることであり、欧州では4度目のロックダウンが実施されている。
唯一活路を見いだせる可能性があるのは、昨年末から欧米で開始されたワクチン接種である。まず始めに欧米で承認されたファイザー社製のRNAワクチン、コミナティが日本でも承認を受け3月から医療従事者を始めとして接種出来るようになってきた。
残念ながら私自身の病院はコロナウィルス感染患者を受け入れていなし、私立の病院であることからか、今の段階(4月の第2週)ではワクチン接種がいつになるのか未定である。
勤務先によってはパートの医師でも接種を実施している病院があり、私ごとながら麻酔科医である家内はもうすでに2回の接種が住んでいる。受け入れ病院でなくとも入院患者に紛れてコロナウィルス感染症例は実際に認められ、上述のように当院でも2度クラスター発生があった。
とにかく先ずは医療従事者、続いて高齢者やハイリスクの対象者を可及的に早く終わらせて、一般の人に行き渡るよう善処してほしいものである。さもなくば昨年から延期になった東京オリンピック2020は今年に開催することもまず無理であろう。
以上